函館アイヌ協会(黒島均会長)は12日、アイヌ民族の祖先供養の儀式「イチャルパ」を函館市立博物館の横の広場で執り行った。市民が見守る中、祭壇(ヌササン)と炉が据えられた会場で祈りをささげ、祖先の霊を慰めた。道内外のアイヌ民族や市民ら約20人が足を運んだ。
同博物館が収蔵していたアイヌの遺骨を供養する目的で2016年に始まり、同館と協力して毎年行っている。神奈川県在住でアイヌ民族文化財団のアイヌ文化活動アドバイザー平田篤史さん(62)が祭司を務めた。
初めに神に祈る儀式「カムイノミ」を行い、平田さんがアイヌ語で口上を述べ、炉の縁に座った男性たちが火の神(アぺフチカムイ)に祭具のイクパスイを使って酒をささげた。「イチャルパ」は、女性たちが細かく砕いた果物や菓子などの供物を祖先の霊にささげた。アイヌ民族伝統の踊り「リムセ」も披露された。
初めて足を運んだという市弁天町の主婦、本多美香子さん(45)は「和やかな雰囲気で入りやすく、アイヌ文化への理解が深まった。祭祀が始まると荘厳な雰囲気になり、とても印象深かった。来年も来たい」と話した。(神部 造)