【江差】町教委が行う旧幕府軍の軍艦「開陽丸」に関する今年度潜水調査は30日、3日目を迎え、予定していた船体などのサンプル回収を終えた。
この日は、船体をむしばむフナクイムシ(貝類)対策のため1989年にかぶせた銅網の有効性と船体の保存状態を確認するため、船体の木造部分の一部と遺跡上の堆積物を回収。
それぞれ分析に出し、木片からは樹木の種類の特定と、植物繊維などの主成分「セルロース」含有量を計測し劣化具合を判断。堆積物からはフナクイムシが避けるとされる銅イオンを分析し、銅網から銅イオンが溶出されていたかを科学的に検証する。
船体サンプルは、水深約5・5メートルの銅網がかぶさっている部分と、かぶさっていない部分からそれぞれ2カ所の計4カ所から、1辺が約10センチ程度の柱状で採取。堆積物は内径4センチ、長さ30センチの筒の片側から、銅網上の堆積物に向けて押し当てて12本採取した。
サンプルの発送作業に当たった奈良文化財研究所の国武貞克主任研究員は船体サンプルについて「銅網がないものはフナクイムシが入り、バクテリアによる侵食があるものの、思っていたよりはしっかりしている」とし、銅網のあったエリアからのサンプルではフナクイムシが少ない状態で、銅網のないものより重みがあったという。
国武主任研究員は「分析で良い結果が得られれば、銅網をかける方法が良いと判断できる」とし、潜水作業に当たった東海大学海洋学部の木村淳准教授は「開陽丸を海底で保存する基礎データが今回の調査でそろうのではないか」と期待を寄せた。分析結果は11月上旬ごろ判明する。(入江智一)