松前小島の施設から、発電機などを盗み出したとして、北朝鮮の木造船の乗組員が逮捕された事件で、函館地裁は19日、窃盗の罪で昨年12月に起訴された船長のカン・ミョンハク被告(45)の初公判を3月9日午前10時から開くことを決めた。
起訴状によると、カン被告は、昨年11月10~28日ごろまでの間、木造船の乗組員と共謀し、松前小島の共同宿舎など4カ所から発電機など30点(時価計77万1300円相当)を盗み取ったほか、海上保安庁が管理する松前小島灯台の総合管制舎と敷地内からソーラーパネルなど9点(時価計486万8900円相当)を盗み取ったとされる。
函館地検は被告の認否について明らかにしていないが、被害額の大きさや、法廷で明らかにすべき事柄があると判断し、略式起訴で罰金刑を求めるのではなく、公判を求めたとみられる。
日本と国交のない北朝鮮の国民を日本の法廷で審理する前例のない裁判となる。公判の中で松前小島に接岸した経緯や、島での滞在期間やその際の様子、北朝鮮船による漁の実態など、被害にあった松前さくら漁協などの関係者が注視する中でさらなる事実が明らかになる可能性がある。
10人を乗せた木造船は昨年11月28日に松前小島に着岸しているのを海保が確認し、同29日に松前沖で漂流しているのが発見された。木造船は海保の巡視船に係留され、道警などの事情聴取が進められていたが、逃走を図ったため同12月9日に道警が船長ら3人を窃盗の疑いで逮捕した。
10人の乗組員のうち、カン被告と、道内の病院で結核治療中の1人を除く8人は今月9日、札幌入国管理局によって強制送還されている。