4月で開設10周年となる自主夜間中学「函館遠友塾」(今西隆人代表)の第8回卒業式が24日、フォーポイントバイシェラトン函館で開かれた。関係者約50人が見守る中、卒業生15人のうち出席した10人に卒業証書が手渡された。祝賀会ではこれまでの歩みを振り返りながら、学びの喜びをかみしめた。
遠友塾は、戦争や家庭の事情、病気などで満足に義務教育を受けられなかった人を対象に、札幌の遠友塾でスタッフ経験があった今西代表(62)が2009年に開講。現在は3年制から2年制となったが、市総合福祉センター(若松町)で毎週水曜日に2時間の授業を実施し、国語、数学、英語、理科、社会の5教科を生徒に合わせて指導。聴講生も含めて20~80代の42人が在籍し、ボランティアのスタッフ15人が活動を支えている。
今回卒業となった越田和雄さん(77)は「普段と違うことを学ばせてもらった。新しい何かを覚えて帰ることができる場所」と話した。また、1期生で聴講生として通い続ける岩戸良子さん(84)は「戦後、家庭の事情で高校に行けなかったので、私にとっては遠友塾で学ぶことが人生の最大の喜び。英語も辞書を引っ張りながら勉強できるようになった」と話した。
卒業生は今回で計98人となった。近年は若い世代の入塾もあり、学びのニーズが多様化している。今年度で代表を退く今西代表は「当初は戦争の影響で義務教育を受けられなかった人も多かったが、社会的役割を一つ達成できた。塾生の熱心な姿に私が力をもらった10年でした」と話す。代表を引き継ぐ菅原智明さん(54)は「10年間で築いてきたものを継続していきたい」と話している。
学びたい人やスタッフも随時募集中。見学もできる。問い合わせは菅原さん(0138・31・2354)へ。(今井正一)