函館の文芸誌「視線」(和田裕編集長)の第8号がこのほど、完成した。巻頭には特別企画として、元国際啄木学会会長の近藤典彦さんが「『一握の砂』-その成立と構造の考察」と題した論考を寄せた。
2010年に復刊した同人誌で「視線の会」が毎年1冊発行している。今号は評論、詩、小説、随想を合わせて14本を掲載した。
近藤さんは啄木来函110年の節目の昨年9月、函館で講演したほか、啄木の歌集「一握の砂」「悲しき玩具」の解説本を出版。視線に掲載した論考では、歌集の出版が決まってから「一握の砂」として完成するまでの収録した歌の変遷を追った。
また、ロシア極東連邦総合大学函館校の元副校長セルゲイ・アニケーエフさんはプーシキンの評論を寄せた。新同人の水関清さんは「『山月記』における『虎』の研究」と題して、中島敦の評論などを執筆。和田編集長(71)は「水関氏は市民文芸の常連。作家論、作品論としてのバランスが良い内容で、説得力のある評論となっている」とする。
編集後記では昨年道立文学館が「図録・作品集 北方文芸2017」で「視線」が取り上げられたことに触れた。和田編集長は「今後は若い人、高校生の作品も掲載していきたい。函館ゆかりの文人を取り上げ、市民に資料として提供していく」と話している。
A5判、143ページ。一部500円で、三省堂書店(川原町4)で販売している。(今井正一)