国内最大の総合美術展覧会「第11回日展」の書部門に、函館書藝社(安保天寿会長)の6人が入選した。このうち、函館本通中学校教諭の葛西広治(雅号・青龍)さん(59)が調和体で初入選を果たし、「定年前の受賞で、書を続けるように言われた気持ちで頑張りたい」と喜んでいる。
葛西さんは道教育大函館校在学時に書を本格的に始め、毎日書道展、創玄書道会、道展、函館書藝社、函玄社で活躍。日展は十数年前に2、3回、漢字で出品するも落選。以降出品していなかったが、昨年調和体で再挑戦。入選はならず、今年も挑戦を志した。函館市民文化祭展示部門「清秋・函館市文団協芸術展」展示委員長として多忙の日々が続き、10月に入って締め切り6日前から出品作を制作。「何とか間に合い、昨年より良い感じの作品ができた」と応募した。
題名は「戦争(北川冬彦の詩)」。日ごろから愛読、引用する「昭和詩集」の中で詩人、北川の「烈風が壁を引き剥ぐ 泥木の溜りへ倒れる鶏 脚を折られた樹木 巨大な重量の反響が烈風の咽喉を塞ぐ」は以前から気になっていた一節という。入念に墨をすり二八尺(幅60センチ、長さ2メートル40センチ)の紙に向かい「少し書いてみたらうまくはまった」と好感触を得た。流れを良くするためゆっくりと筆を走らせ、去年の反省を踏まえ前後の文字のつながりや字配りなどバランスを意識。特に中央の「鶏」は神経を注いだという。
入選の知らせを受けたが、日展は「清秋―」の会期中でもあり「想定外で動揺したが上京を決めた。続々と祝福を受け、大ごとだと実感した」と笑顔。3日に訪れた会場で「白黒明快で何度もじっくり見た」と好評の言葉を受けたという。「周りの人はオリジナルの表現を開拓、修得している。私も自分らしさが少しでも表れる作品を目指したい」と意欲を語った。
日展は24日まで東京の国立新美術館で開催。今年の書部門は8662点の出品で入選は1114点。うち道内は20点。函館書藝社で葛西さん以外の入選者(雅号)は次の通り。
鈴木大有さん(16回目)、天満篤子さん(9回目)、秋山翠聲さん(5回目)、天満谷貴之さん(2回目)、管野春静さん(同)。(山崎純一)