【北斗】ダニを媒介した感染症の研究者や医療、行政関係者ら約60人が16日、国内最初のロシア春夏脳炎(ダニ媒介脳炎)に発症した佐藤厚子さん(61)宅=北斗市三ツ石=を訪問し、闘病体験を聴いた。
15~17日に函館市内で開かれた学術団体「ダニと疾患のインターフェイスに関するセミナー(SADI)」の北海道・函館大会2018の疫学ツアーで佐藤さんを訪問。
佐藤さんは37歳だった1993年に発症し、ウイルスが脳幹を直撃した後遺症で全身の随意神経がまひ。両手両足、首などに障害が残り、車いすの生活を続ける。98年に障害者らの親睦団体「ウイズ・ユー(前向きな障害者と仲間達)」を設立し、会長を務める。
佐藤さんは訪問者の前で発症時の状況や現在の生活について説明。意識回復後のリハビリや検査については「ほとんどの検査は電気を使い苦痛だった。今後の予防、治療に役立ててほしいと検査を受けたが、その思いが現場の医師や看護師に理解されず屈辱的な思いをした」と振り返り、「患者にも尊重すべき尊厳がある」と訴えた。
また、近年、道内で感染者が新たに確認され、死者が出たことについて、佐藤さんは「唯一の生存者として沈黙していた自分を責めた。今後、犠牲者が出ないよう対策を進めてほしい」とし、啓発・予防対策の推進を求めた。
ダニ媒介脳炎は佐藤さんのほか、国内で2016年8月から今年5月まで4例(いずれも道内)が確認され、2人が死亡している。(鈴木 潤)