函館市教委は新年度、虫歯予防に効果があるとされるフッ化物洗口を市内全46小学校に拡大する。本年度に亀田小、弥生小、臼尻小の3校で試行実施した結果、フッ化物利用について有効かつ安全であると判断。新年度予算案に経費600万円を盛り込んでいる。
フッ化物洗口は希釈した薬剤で口内をゆすぎ、歯のエナメル質の表面に作用させ、虫歯を予防する方法。
市教委によると、昨年7~11月に亀田で15回、弥生で13回、臼尻で17回試行し、8割(亀田254人、弥生161人、臼尻31人)の児童が参加した。3校の校長や養護教諭、保護者代表、歯科医ら計11人で構成する「市フッ化物洗口事業検証委員会」で検証を行い、報告書を同10月に市教委へ提出。各校で薬品の適正管理や希釈の複数教員での確認、保護者への説明、校内での実施方法の共通理解、水道水による事前練習など安全面に十分配慮されたことが確認できたという。
3校での試験導入の実態や道フッ化物洗口ガイドブックも参考にしながら、本年度中に市独自のマニュアルを策定。新年度は46校で対象児童数は約1万人。ただ、保護者の同意を得た上で行うため、全児童が対象にはならない。
市のフッ化物洗口の取り組みは後発だ。教職員組合や保護者の間には、子どもの薬剤誤飲や健康被害を不安視する声があり、導入に向けた環境が整っていなかった。しかし、道教委の2014年度の調査では、市内の12歳児の永久歯の1人あたりの平均虫歯本数が全国1・00本、道1・73本に対し、2・01本と全国平均の2倍となっている。また、道内で事故や健康被害の報告がないことや、全国に先駆けて1970年に小学校での集団フッ化物洗口を導入した新潟県では、12歳児の永久歯の平均虫歯本数が0・48本(14年)と効果が顕著なことも決め手となった。
市教委は、虫歯本数が多い背景として就学援助の認定や生活保護の受給割合が高い実態を踏まえ、家庭教育でカバーできない部分もあるとみている。保健給食課は「フッ化物洗口は虫歯予防の効果が実証されており、全校導入を決めた」としている。(山崎大和)