市民の思いが詰まった三十三観音を守り
人の縁を結ぶ〝行きつけ〟の寺に
「湯川寺」の始まりは、函館初の浄土宗の寺とされる「称名寺」の住職が、1892年に設置した「下湯川称名寺説教所」。1919年に独立し、現在の名前となり、隣接して複数の寺が開かれたことからこの地域は〝寺町〟とも呼ばれた。境内に並ぶ33体の観音像は、西国三十三観音の分霊所として、1834年に函館山に安置された由緒ある石仏。〝山かけ〟と称する巡拝を多くの市民から受けるも、99年、陸軍要塞の建設に伴い山の裾野に下ろされ、1914年、湯川村に遷座。60年以上町中に祭られたが、道路拡張工事などを機に、75年、寺の境内に集められた。現在の観音像の土台には、近畿2府4県と岐阜県に点在する霊場を巡拝し、採取した土が収められており、「西国移土三十三観音」として、現地のご利益を身近に届けている。
古くから地域の人の集いや学びの場としても親しまれてきたこの寺では、宗派を問わず足を運べる〝行きつけのお寺〟を目指し、2016年に多目的スペースとしてカフェを新設。縁結びのイベントや写経体験といった多彩な催しをはじめ、毎週木曜日には境内にキッチンカーが集い総菜販売で賑わうなど、時代に合わせた新たな試みが、コミュニティーの場としての寺の原点を伝えている。
(ハコラク 2022年 4月号掲載)
浄土宗 瀧澤山湯川寺
函館市湯川町3‐35‐10
☎0138‐57‐6449
寺務所9:00~17:00
※御朱印の受け付けは
13:00~ 無休 P有り