沈没から153年
町を挙げての海底発掘が幕末の歴史の裏側を伝える
1868年、江差沖に沈んだ幕末の軍艦「開陽丸」。海の底に失われた雄姿を1990年に原寸大でよみがえらせた「開陽丸記念館」は、海底発掘調査により引き揚げられた3万点を超える遺物の一部を厳選して展示。実物の大砲や人物のレプリカで当時の船内の様子を再現しながら、開陽丸の誕生から戊辰戦争最後の戦い・箱館戦争までの歴史を分かりやすく伝えている。
土方歳三率いる陸軍援護のため江差沖に向かい、戦闘前に座礁した船の中には大量の砲弾が残されており、発掘された大小さまざまな砲弾を見ると、幕府の運命を懸け、当時の最新鋭技術を結集した軍艦を失った旧幕府軍の無念がしのばれる。しかし、エンジン部品など一部の技術は現代の船舶にも変わらず受け継がれており、造船国オランダに派遣された榎本武揚ら15名の留学生がもたらした日本近代化への恩恵は、今なお私たちの生活を支えている。1975年に本格的に始動した海底発掘調査では、専門家の協力の下、江差高校化学クラブの生徒をはじめ、町を挙げた保存活動が行われ、水中考古学における日本の技術発展にも貢献してきた。軍艦としては短命な悲運の船だったが、幕末に生まれた熱き志は、記念館の中に形を変えて残されている。
(ハコラク 2021年7月号掲載)
開陽丸記念館
江差町姥神町1‐10
☎0139‐52‐5522
9:00~17:00
(16:30券売終了)
休館日/4~10月無休、
11~3月月曜、祝日の翌日
(月曜祝日の場合は翌火・水曜休み)
年末年始
入館料/大人500円、小・中・高校生250円
P有り