サクラ並木が美しい洋式城塞と
市民の暮らしに溶け込む貴重な古建築
「松前藩戸切地陣屋跡」は、箱館の開港に伴い蝦夷地の防衛強化を目的に松前藩が構築した日本最初の洋式城塞。構造は西洋式城郭の「四稜郭」で、砲座も保有。箱館戦争時に守護隊の手によって、建物を自焼・放棄したため現在は土塁や空堀が残るのみだが、国指定文化財の史跡公園として市民に親しまれている。道道96号線から陣屋跡にかけて約800m続くサクラ並木のトンネルは、日露戦争の勝利を祈念して植えられたのが始まりで、「北斗桜回廊」の名所の一つに数えられている。
新函館北斗駅近くの住宅地で、かやぶき屋根が目を引く「安藤宅『まねきや』」。かつて樺太に渡り「まねきや」という店名の雑貨店で財を成した故・安藤正一氏が、旧大野町の農家宅を買い上げ同名の駄菓子店を営んでいた。築110年になる建物は、函館近郊の典型的和風民家の形式を持つ豪壮なたたずまいが、懐かしい風情を感じさせる。
大きく突き出したひさしを持つ「熊谷家住宅主屋」は、江戸時代末期頃、旧上磯町の農林業の基礎を築いた熊谷宇兵衛が店舗兼住宅として建設。道南一帯の伝統的な町家形式をよく残している重要な建物で、2006年、国登録有形文化財(建造物)に登録されている。
(ハコラク 2020年5月号掲載)
【松前藩戸切地陣屋跡】
北斗市野崎
問い合わせ/北斗市郷土資料館
☎0138-77-8811
※2020年の 「北斗陣屋桜まつり」は中止
【安藤宅 「まねきや」】
北斗市市渡460
※外観のみ見学可
【熊谷家住宅主屋】
北斗市中央2‐5‐33
※外観のみ見学可