函館市入舟町で家具工房「くらcra」を主宰する家具職人、鳥倉真史さん(43)が、ものづくり活動に貢献した個人・団体に贈られる今年度の「ものづくり一本木選奨」(公益財団法人北海道文化財団主催)の奨励賞を受賞した。今回で6回目となる一本木選奨で、道南からの受賞は初めて。道南スギを使った針葉樹の活用や、旧函館区公会堂の家具の調査と修繕に携わった点が高い評価を受けた。
同財団は、道内の工芸美術とものづくり分野での取り組みを応援する「長原實、スチウレ・エング人づくり基金」(愛称・人づくり一本木基金)を2015年度に創設。顕彰事業としてものづくり一本木選奨を設け、今回は長原賞、地域貢献賞、奨励賞に1人ずつが選ばれた。奨励賞はものづくり活動の将来を担う若者へ贈られる。
鳥倉さんは、北海道芸術デザイン専門学校(札幌)を卒業後、家具の製造会社「インテリア北匠工房」(上川管内東神楽町)に勤務。国家資格「一級家具製作技能士」の資格を持つ。18年末に会社を退職し、19年1月に函館に移住、工房を開設した。地域ブランド「新箱館家具」デザインコンペ2018で最優秀賞を受賞した実績を持つ。
工房は使われていなかった古い石蔵を改築し、自宅兼作業場として使用。歴史ある建物の保存と活用にも一役買っている。
手作りの家具は旭川家具の流れを汲んでおり、テーブルやいす、キャビネットなどの箱物、端材で小物も作る。オリジナル製品のほか、受注生産にも応じる。公会堂の家具修繕の経験を生かし、鳥倉さんは「今後作る家具に、明治期の洋家具の要素を取り入れたら面白い」と話す。
新型コロナウイルス感染拡大に対応した飛沫(ひまつ)防止パネルの製作や、道立函館美術館のカフェに道南スギを使ったいす5脚、道南産ヤマザクラを使ったテーブル2枚を納品するなどの活動にも取り組んでいる。鳥倉さんは「若い人のものづくりを応援したいという基金の目的をしっかり受け止めたい。規模を大きくして生産力を高め、地域に求められるものを作っていきたい」と決意を新たにしている。(山崎大和)