久しぶりの東京出張で友人に会った。ランチの予約もなかなかとれない人気店とのことだったが、オードブルの後に出てきたこの皿を見て納得した。
まず、28種類の野菜の名前と調理法が書かれた紙がランチョンマットの代わりに敷かれた。日付も印刷してある。その上に野菜名と重なるように小さい野菜たちが美しく並んだガラスの角皿が置かれた。満席のテーブルのあちこちから歓声が聞こえた。
上段左から、マリネされたビーツ、蒸し焼きのサツマイモ、米酢マリネの長芋、寒天寄せのレンコン、グラッセのニンジン、塩麹マリネの大根、キヌアのオリーブペースト和え。一番下は左からニンニク風味のボイルした水菜、煮浸しのゴボウ、ゼリー寄せのカボチャ、オーブン焼きのズッキーニ、茹(ゆ)でたジャガイモ、オーブン焼きの椎茸、トマトの赤ワインマリネのバジル風味である。ほかの14品も、茹でるか、蒸すか、焼くか、和えるかで、複雑な調味料も使っていない。だがこれほどの種類を、これほど美しく切り、盛り付けることは容易ではない。続く料理の説明もサービスも満点だった。
若いお客の多くはすぐに撮影してSNSに投稿しているようだった。宣伝効果は計り知れない。この店は山梨県の有機自然農法の野菜を使っていたが、北海道の野菜は負けてはいない。見せ方の工夫次第でこんなに話題になる。野菜に限らず、観光であれ工芸品であれ、質のよさだけに頼っている時代ではないのだと改めて痛感した昼食会だった。
(生活デザイナー)