北海道ではおせち料理の材料といっしょに華やかなお菓子が並ぶ。「口取り」とか「口取り菓子」と呼ばれる。ピンクの鯛やオレンジ色の海老に、緑も鮮やかな笹などがセットになっていることが多い。大きなものは、富山の細工かまぼこによく似ている。写真は和菓子サイズのものだがお正月仕様のデザインである。
先日、東京のアナウンサーの友人から電話があった。口取り菓子のことが知りたいとのこと。北海道と青森近辺だけものだという。残念ながら歴史的な背景は分からないが、北国の限られた食材でつくる正月料理の中で、カラフルで甘い「口取り」は格別なものに違いない。高齢者も子供もみんなが楽しめる。特別な日の一品として今日まで愛されてきたのだろう。
口取りは本来、お祝いの席などで一番先に出される酒の肴(さかな)だった。次第に甘い味付けのものも作られるようになり、おせち料理にも、伊達巻、きんとん、黒豆、紅白の蒲鉾など、色とりどりの縁起物が口取りとして詰められるようになった。北海道では、おめでたい形の甘い和菓子がおせち料理に加わったのだろう。富山の豪華な細工かまぼこを模したような気もするが、真偽を知るすべはない。
木の葉の形をしたべこもちも北海道だけのものだ。青森のべこもちとは色も形も違う。北の大地で生まれ、厳しい開拓の歴史の中で人々に愛されてきたのは口取り菓子も同じである。いつもとは違う静かな年末年始になるようだが、地元の味をゆっくり楽しんでみようと思う。(生活デザイナー)