師走も中旬になるが年末の華やいだ気分は全くない。忘年会もクリスマス会も苦手だったが、一切なくなると寂しいものだ。やっとワクチンの光が見えてきたが、不安はつのるばかりである。写真は疲れて立ち寄ったカフェのコースター。店員さんの手描きのメッセージが心に沁(し)みた。
今年は「不要不急」という言葉を何度耳にしただろう。辞書には「どうしても必要というわけでなく、急いでする必要もないこと」とある。「無くてもよい」「差し迫っていない」という説明もあるが、差し迫ってどうしてもしなければならないことなど、どれほどあるだろうか。
長時間待つ病院も最近は空いている。あんなに混んでいたのに不思議である。病院に来なくてもよくなったのか。今までは少しの不調でも病院に駆け込んでいたということか。もし検診や診察を敬遠する人が増えているとしたら大問題である。病気の発見や治療が遅れるとしたら一大事だ。
そんな中、先月私たち家族は高齢の叔母を見送った。夫がたった一人の血縁者だったので、叔母の闘病を支える日々は不要不急だとは思えなかった。毎月の東京通いが毎週になり、重篤になってからは週に2度北海道から飛んだ。許可を得てなんとか面会できた。
だが今、施設にいる高齢者や入院中の方々とご家族は皆さん必死に寂しさと心細さに耐えている。顔を見て声を聞く、たったそれだけのことができない。こんなに科学が進歩したのに。せつない師走である。(生活デザイナー)