アスパラを格安で買った。太くて立派だが、サイズがバラバラでどれも曲がっている。筋があって固いのではないかと案じたが、茹(ゆ)でても焼いても甘くておいしかった。正規品の半値だった。近所の友人にその話をしたところ、さっそく買いに行って大喜びしていた。アスパラは値段が高くても、太くて真っすぐなものが良いと思っていたという。価値観が変わったと彼女は笑った。
アスパラだけではない。このたびの騒ぎで多くの人がいろいろな価値観を変えたと思う。「雨が降っても槍(やり)が降っても」という表現がある。「這(は)ってでも」という言い方をすることもある。仕事や学校には何があっても行くものだと思っていた人が少なくない。休むにはそれ相当な理由が必要だった。
だが、行かなくてもできる仕事はこんなにあり、学ぶ方法もたくさんあった。楽しみにしていたイベントや行事が中止になっても我慢できた。外食ばかりだった人が自炊に喜びを見つけたり、自転車や徒歩での通勤通学で健康になった人もいる。SNSでのつながりを再評価した反面、それが重荷になってきた人もいる。
今までこだわっていたモノやコトを違った角度から見るのも悪くない。アスパラだけではない。規格外で結構。購入ルートも開拓しよう。できることは工夫して自分でやろう。そして「ステイホーム」や「我慢」ができる人ばかりではないことも忘れてはなるまい。価値観を変え、想像力を働かせ、人を思いやる日々はきっと未来を変える。そう信じたい。(生活デザイナー)