日本人はなぜこんなに桜が好きなのだろうか。一斉に咲く美しさは他に類がない。散るさまさえ心に残る。卒入学の時期とも重なり、日本人の心象風景には欠かせない花なのだろう。
その桜が東京で満開になった。名所には早々に花見客が押し寄せた。その様子をテレビで見た多くの人は驚き、眉をひそめた。私もその一人である。都内の叔母を見舞う必要があり、2月からほぼ毎週東京に通っているが、都心の人の流れはいつの間にか戻り始めていた。
桜の満開で一気に「平常化」するとしたら一大事である。特に罰則がなくても、注意喚起には耳を傾けられる私たちだったはずだ。政治家たちの声がやっと大きくなった。遅きに失した感はあるが効果はあるだろう。お花見は不要不急の外出か。答えは明確である。何カ所かの桜の名所が通行止めになったが致し方あるまい。
各自、各商店、各企業が抱える問題は計り知れない。今、自分にできることは何か、日々それを考えるしかない。そんな中、必要があって勉強仲間が少人数集った。健康状態の確認はもちろん、消毒、距離、換気に配慮しての開催とした。久しぶりの再会なので、買ってきた桜をなんとか満開にしたくて、部屋を暖めたり、涼しい場所に移動させたりして調整した。その甲斐あって当日は見事に満開になった。北国に桜が咲く頃には収束していてくれることを祈るばかりである。(生活デザイナー)