待ちに待った良い季節なのに、この週末は天気が悪かった。お盆を過ぎたら、あっという間に秋風が吹く。一年に数回の貴重な夏の週末だが、仕方なく遠出をやめて自宅で過ごして気がついた。なんと一日の長いことか。実は一日が長く感じたのにはもう一つ理由がある。「インスタ」が不調だからだ。たまに投稿したり、同じ趣味の人たちの投稿を楽しんでいたのだが、意外なほど時間を費やしていた。SNSに使う時間を考え直す機会になった。
時間といえば思い出すホテルがある。旅人として函館を訪ねた30年ほど前、当時話題だったホテルの部屋にはテレビも時計もなかった。理由を聞くと時間の流れを気にせず、ゆっくりお休みいただきたいからだという。静かな部屋は正直なところ少々寂しく、時計がないのは不自由だったが、仕事ははかどり、休養もできた。確かに滞在中の時間の流れ方は日常と違った。
最近、近郊の公園を散歩する時間が増えた。さまざまな幹や葉の美しさを眺め、種類や名前を調べながら歩くと時間を忘れる。私は針葉樹が好きなのだが、エゾマツとトドマツ以外にも北海道には外来種も含め、20種類近くの針葉樹があるという。アカマツの北限とされる七飯町の赤松街道は独特な風情もあり、実に美しい。植栽された街路樹を含め、樹木は人々の歴史を語り、同時に自然環境の変化への警鐘も鳴らしてくれる。ITだ、AIだと世間はにぎやかだが、まずは森と緑を大切にしたい。(生活デザイナー)