足首を骨折して2週間経つが、ギブス生活には一向に慣れない。雪がなければ片足サンダルでも杖をつきながら歩けるだろうが、雪道は怖い。骨折したから余計そう思うが、実はこの数年は年々冬が辛くなっている。
かつて暮らした広島時代の冬が恋しい。秋から2月ごろまでは生垣の山茶花(サザンカ)の花が美しかった。山茶花は椿(ツバキ)にそっくりだが葉が小さい。よく見ると葉のツヤや葉の縁、葉脈にも違いはあるが、花の印象はそっくりである。
広島に転居した時は、大好きな椿が冬中楽しめるのかと喜んだが、椿より2カ月早く咲き出す「小型の椿」は山茶花なのだと教えてもらった。なるほど、花びらが道に散っている。椿は丸い花が形のまま、ぽとりと落ちる。その落ち方が苦手だと言う人もいるほど潔い花の終わり方だが、山茶花は他の花と同様、一枚ずつ花びらが散る。そして山茶花には甘い香りがあるが、普通の椿には香りはない。見た目は似ているが違いは大きい。
10月の下旬には初雪の声を聞き、4月の入学式の頃まで雪の心配をする北海道との季節の違いを私は山茶花で思い知った。高い灯油代、悪路での事故、除雪の苦労など、なんと雪国は不利なのだろうか。だが嘆いても仕方がない。雪の中の花火やキャンドルのイベント、数々のスポーツも、雪国だからである。多くの観光客もこれらにあこがれて来てくれている。隣の芝生は青いというが、南の山茶花は美しいということなのだろう。(生活デザイナー)