北国に暮らす醍醐味(だいごみ)は何と言っても夏の涼しさだろう。いくら猛暑だと言っても本州に比べればたかが知れている。だがその特権も、長く厳しい雪と寒さの季節を越えるほどのものかと言えば甚だ疑問である。
人間はわがままなものだ。日々暮らす土地で移ろう季節を楽しみ、その産物を食べることができれば大満足とすべきなのだろう。だがそれが難しい。山海の恵みは毎年同じように供給されるとは限らない。今回の西日本の豪雨による農業、漁業の被害の大きさは計り知れない。それはどこにでも起こりうることなのだ。写真は去年この時期に仕事で使った野菜だが、今年も同じ種類を集めたくて目下奔走しているのだが、なかなかそろわない。北海道にも豪雨があった。気温も日照時間も不安定だった。農家の都合も出荷の事情もあろう。自然相手の仕事は予定通りにはいかない。
実は先週、左耳に違和感と耳鳴りがあり、聴力も落ちて慌てた。幸い発見が早かったので一週間程度で完治したが、健康な毎日が永遠のものではないという当たり前のことを自覚するよい機会になった。日々の生活に追われていると、周囲の自然や自分の体調の変化に関心を持つ余裕はなかなか持てない。何事も失って気付くのは古今東西人間の性(さが)のようだ。日々変化うする周囲の環境にも自分自身にもしっかり関心を持って丁寧に暮らしたいとしみじみ思う夏である。(生活デザイナー)