秋田県出身の友人からこけしの絵付けを習った。ご実家の川連漆器の工房でこけし作りを見て育った彼女は大学で心理学を教える傍ら、いつしかこけしの文化や絵付けの指導もするようになったという。
絵付けは正しくは描彩という。時節柄、ひなこけしの描彩に挑戦したくなり、周囲に声をかけたところあっという間に10人が集まった。絵心がある人たちが多かったせいか、個性的で完成度の高い作品が勢ぞろいした。驚いたことに、みな描き手自身やお子さんに似ていた。よくあることらしい。
実は私はこけしには関心がなかった。それが友人と話すうちに、東北地方の木のおもちゃであるこけしは、それぞれの土地と作家により個性が異なる工芸品であることを知り、すっかりとりこになってしまった。最近は若い女性にこけしファンが増えて空前のブーム到来とのこと。私も昔頂いたこけしや、両親が集めた各地のこけしを並べ、ひそかな愛好者になりつつある。
今回のこけしの描彩は意味のある体験だった。顔やキモノの柄のデザイン画を描くことも、こけしに鉛筆で下絵を描くことも、色をつけることも、みんな言葉もなく夢中だった。日ごろスマホやパソコンに向かっている我々にはどれも本当に新鮮な作業だった。そして手の中にすっぽり収まるこけしの木の柔らかなぬくもりは何にもかえられない、忘れていた感触だった。(生活デザイナー)