中学、高校生の読解力が不安だという記事を読んだ。国立情報学研究所の研究チームの調査だが、にわかには信じられない結果だった。
「幕府は、1639年、ポルトガル人を追求し、大名には沿岸の警備を命じた」と「1639年、ポルトガル人は追求され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」という二文が同じ意味かどうかという問いに、中学生の43%が同じだと誤答し、高校生も28%が間違えたというのだ。この数字は大きすぎる。読書量の減少やスマホの利用が理由かと思ったが、読解力との直接の相関はないという。
大学で試験をすると予期せぬ答えに出くわすことがあるのだが、その傾向は確実に増えている。何を問われているのか分からないらしい。慌てたり、緊張したりするからかと思っていたが、基本的な読解力不足が理由だったか。
この読む力は、単に文章を読む力というだけではなく、聞く力、相手を理解する力にもつながる。最近の若い人は話していてもすぐに「もういいです」とか「分かりました」と言う。意見が違うと相手を批判してそれ以上理解を深める努力をしない。スピード重視の時代の一つの結果にも思えてくる。
急がされることに慣れてしまったのか。「じっくり」「ゆっくり」それだけで試験の結果も人間関係もずいぶん変ってくるだろう。AI時代だからこそアナログの手順や落ち着きが必要なのではないかとしみじみ思う師走である。(生活デザイナー)