この連載を書かせていただくようになって10年以上経つ。9月9日の「重陽の節句」についても何度も書いたと思う。「菊の節句」としても知られ、陽の数字である「九」が重なるおめでたい日である。
無病息災、健康長寿を祝い、祈願する日として、江戸時代に定着した日本の五節句の一つである。1月7日の「人日の節句」、3月3日の「上巳の節句」、5月5日の「端午の節句」に続き、7月7日の「七夕」も立派な節句。そして、5番目が重陽の節句である。
旧暦の9月9日は現代ならば10月。収穫の季節である。農業の国では意味のある時期の節句ということになる。菊酒のほか、この日に茄子を食べると病から守られ、栗ごはんも縁起がよいとされてきたのもうなずける。
今年も仕事仲間たちとこの節句を祝う集いを企画したが、相変わらず知名度は低い。すでに始まっているハロウィーンの話題とは対照的に影が薄いのが悔しい。ひな祭りや端午の節句のような豪華な装飾や、ハロウィーンの仮装のような奇抜なアクションがないからか。恵方巻きやバレンタインデー、クリスマスのような経済効果を伴う行事にはやはり勝てないか。それとも葬儀のイメージが残る菊はまだ祝いの主役にはなれないということか。
和食やおもてなしという言葉が注目されるようになったのはうれしいが、日本の年中行事も大切にしたい。継承は大人の仕事である。今年も半ば意地になって書いてしまった。これは私の仕事だと思っている。(生活デザイナー)