仕事がひと段落した日、懸案だった食器の整理にとりかかった。家族には使わないモノは捨てるようにと日々言われている。よく分かっているが、それがつらい。
生涯着ない洋服なら捨てる。かかとや底がダメになった靴も捨てる。だが、食器は難しい。なぜなら流行がないからである。それどころか古い方が良いから困る。そうは言っても、テレビや雑誌で話題になる料理写真の食器には明らかに「はやりすたれ」がある。
最近は、木製の持ち手付きのまな板や、スレートと言われる黒くて平らな石の板が食器として人気がある。スレートはヨーロッパでは建築に使われている石材である。いつの間にか和洋中華、どの場面でも白い食器が主流になってしまったので、新しい器の登場は喜ばしい。
もともと日本にはさまざまな食器があったのだが、洋食も中華料理も家庭で作るようになり、私たちの台所には調理器具も食器もどんどん増えてしまった。そしてそれに反比例して昔からある漆器や食器が処分されるようになったのだ。
写真は骨董(こっとう)市などでコツコツ集めた舟形の皿である。雑な染め付け、印判のズレ、不ぞろいな形などアップに堪え難いものばかりだが捨てられない。なぜ雑な器がこんなに市井に出回ったのかということも含め、食器から食の歴史をたどってみたい。
器を残すことで食文化の継承もできるに違いない。だから私は食器は捨てない。大問題である。(生活デザイナー)