短い旅の最大ミッションは、カップケーキの調査だった。カフェ経営をしている友人に、本場のデザインや売り方などを見て来てほしいと頼まれたのだ。
実際、駅の売店やスーパー、ホテルでも、どこにでもカップケーキの売り場があった。客の目の前でクリームの装飾をしている店や、格調高く売る有名な専門店など、探し歩いて飽きることはなかった。
だが驚いたのは「色」。子供たちが小さいころしばらく滞在したアラスカで、真っ青のクリームでコーティングされたバースデーケーキを見て仰天したことがある。そのころと変らず、ピンクや黄色は当然、青や紫の色素も抵抗なく使われていた。
安全性の問題はなくても、日本人は食欲をそそられない。不思議な感覚の違いである。そしてクリームの絞り方や装飾の粗雑も気になった。和洋ともに日本の菓子はなんと美しいのか、いや丁寧なのかと思わずにいられなかった。私たちは「丁寧」を幼いころから学んでいるのだ。そう思う場面は他にもあった。
年末はバーゲンの季節でもあった。気軽な量販店だけでなく、有名老舗百貨店でも目を疑ったのは靴売り場。試し履きした靴はすべて放置。床中が履き散らかした靴で埋まっている。何枚か写真を撮ったが、「惨事」すぎてこの欄には載せられない。大の大人が元に戻さない。驚愕だった。道徳教育が希薄になったと嘆く向きもあるが、日本人は立派だと、少なくともアメリカの靴売り場で私は思った。(生活デザイナー)