この春大学を卒業する次女から、ガランとした部屋の写真が届いた。試験を終えたので、卒業式を待たずに札幌の家に引き上げてくる。引っ越しの準備をしながら、この4年間の神戸での生活を振り返り、感傷的だと言う。
それは私も同じである。2年も浪人したのに希望の大学には不合格。心身疲労困憊(こんぱい)の中、3月後半やっと決めた進路だった。私も長女もすんなりコマを進められない青春期だったので、遅咲きの遺伝子だと揶揄(やゆ)していたが、努力が実を結ばないのはつらい。次女には格別な思いがあるに違いないが、良い友を得て留学の夢も果たし、大学院に進学する。人にはそれぞれの道があるのだと改めて思う。
このトンネルからは抜け出せないのではないかと思う日もあった。だが「止まない雨はない」という。「明けない夜はない」ともいう。順風満帆に見える人でも、その帆は嵐に遭い、倒れた日があっただろう。混迷の日々には必ず抜け道がある。近道は悪路かもしれないし、迷子になっても明るい出口に到達できれば問題はない。
大学の教え子たちの未来も気になる季節である。この時期、繰り返し思い出す言葉がある。有島武郎の「生まれ出づる悩み」の最後の一節である。「君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永遠の春がほほ笑めよかし…僕はただそう心から祈る。」私もすべての若い人たちに、ただただそう心から祈っている。(生活デザイナー)