最近の大人たちの愚痴には共通点がある。「笛吹けど踊らない若者…」である。
私の学生時代は、誰かがおごってくれるとか、先生に誘われたら必ずついて行った。この時とばかりに飲んだり、食べたりして議論を楽しんだものだ。だが、いつのころからか若い人たちのお酒の飲み方は変わり、年長者が誘っても必要を感じなければピシャリと断るようになった。
最近、同僚が著名な方を招いて講演会を開いたのだが、予定の1割以下の学生しか出席せず愕然(がくぜん)としたという。単位に関係ない、試験が近い、バイトがあるなど、理由はそれぞれにあったようだが、先生たちが勧め、極めて貴重な体験なら、何とか都合をつけて聞いてみようと思わないのが不思議だと彼は嘆いた。
同じような歯がゆさは私も何度も経験している。昔のような貪欲さは今はない。楽な方、利益のある方、無理のない方を優先する。もちろんこれは悪いことではない。学業や仕事以外での付き合いなど断って良い。だが、若い人たちの情熱のようなものの希薄さ、消極性は実にもったいないとも思う。
「前のめり」で「ほんのちょっと無理」が、想像もしない未来につながることを彼らは知らない。だが嘆くまい。こんな時代を作ったのは私たちなのだから。大人たちが学びや仕事を面白がれば、次の世代は必ずついてきたはずだ。先達者を批判的に見て大人になった私たち世代が今さら笛を吹いたところで、若者たちは踊れないのだろう。どうしたものだろうか。(生活デザイナー)