自宅の教室で和食器の話しをしていた時、生徒さんたちが三平皿も三平汁もご存知なくて驚いた。道産子もいるが、道南出身ではないからか。
私が三平皿に愛着があるのは、函館生まれだからか、祖母が松前出身だったからか、いや、上川町生まれの母は三平汁をよく作ってくれたし、92歳の今も大好物。やはり道内各地で愛されてきた料理に違いない。だが北海道の郷土料理としてその地位を守り続けるのは難しいかもしれない。現に若い世代はご存知ない。寂しいが仕方がない。
三平汁の説明をしていて気がついた。潮汁や船場汁とはどこが違うのか。使う魚が違うだけで、塩味、野菜をたくさん入れた汁物は各地にある。特別なオリジナリティーがあるとは言えない。では三平皿はどうか。
生徒さんに私が使っている三平皿をお見せしたところ、「北海道にしかないのですか」と聞かれてまた慌てた。そんなはずはない。北海道では三平皿というが、本州では「なます皿」と呼ばれる。単に深皿とよぶところもある。直径15センチ前後で深さは4・5センチ程度。汁物を入れるには浅い。むしろ具を食べるのに重宝する。
三平汁の起源やいわれは諸説あって、調べるほど興味が湧く。斉藤三平という人物が登場したり、松前藩、南部藩も舞台になる。なにはともあれ、私は三平皿を毎日使っている。サラダ、肉じゃが、カレー、チャーハン、パスタ、お赤飯やデザートにも。ディナー皿に重ねてもいい。実に便利な器である。(生活デザイナー)