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(荒井三津子さん・暮らしのパレット)「冬の足音」

 駅から大学に向かう一本道は雪虫の群舞。目や口に容赦なく入るし、髪やコートについて離れない。学生たちの悲鳴交じりの大騒ぎは大学まで続いた。
 雪虫とは優雅な呼び名だが、ワタ状の物質をまとったアブラムシである。彼らが飛ぶとおよそ2~3週間で雪が降り、本格的な冬に向かう。1週間以上前から少しずつ飛んでいたが、この群舞には参った。「冬になるぞ」「覚悟しろよ」とあざ笑われているような気にさえなった。避けられない冬だから覚悟はしているが、問題はその季節の長さである。本州の桜が散るまで、私たちは半年近く雪に埋もれて暮らさなければならない。
 それに比べて、かつて暮らした広島はよかった。サザンカの咲く道、水仙の香り、梅のほころび…。冬は色も香りも豊かだった。そう思うとため息しか出ない。北国での生活の不利な点ばかりが浮かぶ。
 だが、スーパーで生のイクラや鮭を見ていたら少し気が晴れた。ないモノをねだっても仕方ない。広島の魚屋にはこんな光景はあるまい。そして広島の夏の暑さはただごとではない。冬くらい快適でもよいだろう。もみじ饅頭(まんじゅう)はあってもベコモチはない。安芸の宮島は自慢だろうが、歴史は浅くても豊かな大地がこちらにはある。
 そうだ、そちらにはそちら、こちらにはこちらの暮らし方がある。生かされている土地での生活は評価しておう歌しよう。よし、イクラをつくろう!(生活デザイナー)

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