わが家の犬は来客に吠(ほ)えることなどなく、おとなしく散歩もするが、8歳なのに常に浮かれ気味で落ち着きがない。犬の躾(しつけ)教室で相談すると、犬は飼い主にそっくりなのだという。飼い主の生活態度がそのまま表れるそうだ。返す言葉がなかった。
周囲を見ると確かに犬と飼い主は似ている。躾が行き届いている犬の飼い主は、大人としても落ち着きがある。これは人間の親子にも当てはまる。子供を見れば親が分かる。どこでどんな挨拶をするか、どんな敬語や謙譲語をどこで使うかなどは日々親から学ぶしかない。親が使わない言葉を子供は使えない。親がしない挨拶はできない。親が無礼なら無礼を無礼だとは気付かない。そんなことを痛感する場面が最近続いている。
若い人たちの言語の乏(とぼ)しさも気になる。何を見ても聞いても「マジ?」「ヤバイ」「マジヤバイ」の3種類。正確には2種類とその組み合わせである。若者の言葉はどの時代にも生まれる。しかし同世代で使うのはよいが、公の場や目上の人に対しては使うべきではない。
だが昨今は親世代の語彙(ごい)と表現力も乏しい。適確な挨拶を学ばず、意見や感想が言えないまま大人になった人が増えたということだろうか。子供に恥ずかしくない日本語を使っているか。子供に見られて良い生活をしているか。大人こそ躾け直されるべき時代なのかもしれない。
犬も娘たちも、私の鏡かと思うと遅きに失した感はあるが、今からでもできることを探したい。まずは落ち着いて暮らそうと思う。(生活デザイナー)