函館市元町の国指定重要文化財「旧相馬家住宅」の一般公開が1日に始まった。現オーナーで、市内で不動産業を営む東出伸司さん(85)が不動産クラウドファンディングを手掛けるLEVECHY(レベチー、東京、高将司社長)に同住宅を売却しており、約16年に及ぶ東出さんの所有下では最後の公開。これまでの支援への感謝を込め、13日まで無料公開している。
同住宅は、幕末明治期に財を築いた豪商・初代相馬哲平(1833~1921年)の私邸として1908(明治41)年に建造。解体危機にあった2009年に東出さんが取得し翌10年から一般公開を行ってきたが、高齢で維持管理が困難となり、1月末にレベチーと売買契約を結んだ。
今月末に引き渡す予定で、5月以降は「ニッポニアホテル函館港町」を運営するバリューマネジメント(大阪、他力野淳社長)が運営を担当。一般公開を継続しながら、土蔵と重文指定対象外であるカフェスペースを客室数3室の宿泊施設に改修し、年内の開業を目指す。
公開初日は好天にも恵まれて多くの見学客が詰めかけ、「これまでよく支えてくださいました」と東出さんにねぎらいの声をかける人も。市内富岡町3の無職、森本美千代さん(66)は「相馬のすごさを感じた。函館市民としては何としても後世に残したい建物だと感じた」と話した。
東出さんはこれまでに約2億円の私財を投じて建物の修復に充て、相馬哲平の心意気を現代に伝えてきた。土蔵は北海道、函館の歴史と文化を伝えるギャラリーとして活用し、小玉貞良がニシン漁でにぎわう江差の様子を描いた「江差屏風」や、蠣崎波響によるアイヌの指導者の連作肖像画「夷酋列像」の複製などを展示してきたが、現状での公開はこれが最後。「今のうちに函館の人々に見てもらいたい」と話している。
13日まで無休で、午前9時半から午後4時半まで。(千葉卓陽)