1913(大正2)年築の旧野口梅吉商店(函館市弁天町)を拠点に展開してきた学生らのシェアハウス兼イベントハウスプロジェクト「わらじ荘」が、5年間の活動を終えた。15日にはラストイベント「さよならわらじ荘」を開き、これまで関わってきた「荘民」たちが旧交を温めた。
わらじ荘は2019年秋、下沢杏奈さん(27)=一般社団法人いとのこ代表=ら道教育大函館校の学生(当時)が立ち上げた。「地域に開かれた学校を作りたい」と夢を抱いていた下沢さんは渡島総合振興局の独自事業「木づかいプロジェクト」ワークショップ参加をきっかけに、夢の実現に向けて道庁職員に相談。過去に同プロジェクトでリノベーションした旧野口梅吉商店の活用が実現した。
わらじ荘では、5年間でのべ32人の若者が共同生活を送りながら、毎月多数のイベントを企画。参加者らの中から入居を希望する若者が増え、20年には新たな「荘」として「みなも荘」(弁天町、旧西浜旅館)、「きらく荘」(谷地頭町、旧中国茶舗ほおづき)を開設した。
15日のイベントは、来場者が障子やアルバムに思い出を寄せ書きし、発表会やバンド演奏でにぎやかに「荘」に別れを告げた。札幌市中央区の中学2年、高橋日鞠さん(14)は小学4年の夏休みに家族と「みなも荘」に滞在したことがあり、「函館に住んでいた頃は、わらじ荘のイベントによく出かけていた。『大学生になったらこういうところに暮らしてみたい』と思っていたので、(活動終了は)寂しい」と話す。
わらじ荘を5年で閉めることは「けじめをつけたい」とおととしから決めていた。下沢さんは、「Gスクエアで開いている中高生の居場所『みちどこ』など、今のいとのこの活動は『荘』でやってきたことの進化版」とし、「私たちの活動は学校や地域で『ポータブルわらじ荘』として続いていく」と、さらなる展開を見据えている。(神部 造)