函館市は29日、函館港若松埠頭(ふとう)にCIQ(税関、出入国管理、検疫)手続きができるクルーズ船用の旅客ターミナルを新設することを明らかにした。総事業費は約14億円で、同埠頭の本格供用が始まる2022年度の完成を目指し、19年度にも基本設計に着手する考え。これまで船内で行っていた入国審査を短時間で円滑に行い、乗客の利便性向上と滞在時間延長による経済効果拡大を狙う。
10月に暫定供用を開始した客船専用岸壁近くに建設し、面積は約1200平方メートルを想定。本格供用時に同埠頭で受け入れ可能な最大の客船「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5906トン)クラスが停泊した際も対応できる規模とした。
内部にはCIQ業務に必要なカウンターをはじめ、インフォメーションデスクやトイレなどを配置。可動式の仕切りを設け、各種手続きに対応する。ターミナルは公衆無線LAN「Wi-Fi」の使用可能エリアに含まれており、他に設置するものは基本設計で検討する。
旅客ターミナルは港町埠頭に客船が入港した際も、同埠頭とJR函館駅前を結ぶシャトルバスの待合場所として使用。客船寄港時以外の活用方法も検討する。
市は旅客ターミナルの整備とバス、タクシーの待機場所を確保するため、同埠頭近くでJR北海道が所有する約9700平方メートルの土地を購入する方針。既に売買交渉を進めており、必要経費を予算に計上して来年度にも契約を結ぶ。
客船ターミナルを巡っては、国が日本発着クルーズの増加などを背景に、各港湾の管理者に対して受け入れ環境の改善を要請。函館に先駆け、秋田や青森でも整備が進められている。
これまで函館に寄港する客船のCIQ手続きは、船内の通路やホールで実施。検査機材の設置などで多くの時間がかかっていたため、運航会社などから旅客ターミナルの整備を強く要請されていた。また、シャトルバスの利用客に対し、天候に左右されない待合場所の確保も課題となっていた。
市によると、来年度函館に寄港する客船は50隻を超えて過去最多を更新し、乗客乗員約10万人が訪れる見込み。総延長360メートルのうち225メートルが完成した若松埠頭の係留岸壁にも、最大4万トンクラスまでの客船が続々と入港する。
市港湾空港部管理課は「旅客の利便性と快適性が高まるターミナルの整備を通じて、クルーズ船の一層の誘致にもつなげたい」としている。(山田大輔)