函館市は新年度、西部地区の歴史的建造物の保存に向け、所有者に対する補助制度を拡充する。緊急的な修繕に活用できる補助金や耐震対策、リフォームに対する支援などの必要経費を新年度予算案に計上。建物を次世代へと継承するため、所有者のニーズに柔軟に対応できる制度へと改める。
対象となるのは伝統的建造物75件、景観形成指定建築物48件の計123件。伝統的建造物群保存地区保存事業費に2600万円(前年度比600万円増)、景観形成指定建築物等保全事業補助金に1238万円(同25万円増)を計上した。従来は、補助率5分の4以内、600万円を上限にして、外観上の損傷を修理する場合に活用する補助金だったが、新たに耐震補強を実施する場合の工事費にも活用できるようにする。
また、新規に創設する指定建造物等活用支援事業補助金には600万円を計上。日常的な維持管理や修繕費として指定建築物の所有者に年7万円(最大14万円)を補助してきた制度に代わり、緊急的な修繕などに対応できるようにする。防寒改修の対象に開口部(窓枠など)を加えたほか、内部リフォームや防火対策にも活用できる。外部改修の場合の補助率は5分の4以内、内部改修などは2分の1以内で、いずれも上限額は100万円となる。
今後、市は補助を活用できる条件など、詳細を取りまとめる。市都市建設部まちづくり景観課は「建物を活用しながら、維持、継承していきたい」とする。市伝統建造物群保存会の小林敏夫会長は「従来の制度よりも建物のために使える制度になったのではないか」と話している。(今井正一)