【北斗】気候変動などに伴う上磯ダムへの流入量減少の解決策となる函館開発建設部の新規事業「国営かんがい排水事業北斗用水地区」が今年度から始まった。約15キロ離れた大野ダムから上磯ダムにパイプラインを引いて水不足を補う国家プロジェクト。上磯ダム下流の旧上磯地区では昨年、米作の重要な時期に農家が輪番で農業用水の取水制限を行っているだけに、事業の早期完成への期待が高い。
北斗市は南東部は平野、西部は山岳、南部は函館湾に面し、南東部の旧上磯地区ではコメや小麦、大豆、ソバ、ネギ、ダイコン、トマトなどを組み合わせた農業経営が行われている。
同地区には、上流の上磯ダムから土地改良事業で造成された農業用水施設で配水しているが、近年、上磯ダムへの流入量が減少。下流の農家は昨年6月下旬から7月下旬、農地を3ブロックに分けて、1ブロックに3日間配水し、2ブロックは止める「輪番かんがい」を実施するなど節水を余儀なくされている。
地元の農家の一人は「田植え後に田んぼが干上がるなど、9日の間に3日しか水が来ないので、水管理が大変。冷害、高温対策にしても十分な水がないと対応が難しい」と話す。
上磯土地改良区(北斗市中央1、吉田直樹理事長)によると、2012年度から24年度までに、上磯ダムからの取水量を減らす取水制限を11回、「輪番かんがい」を4回実施している。
この解決策として今年度から始まったのが、今回の新たな国営事業。今年度から2041年度までの工期で、総事業費は250億円に上る。大野ダムの下流は畑が中心で、ダムの貯水量に余裕があることから、大野ダムから直径450ミリのパイプラインを上磯ダムまで建設して水を供給し、不足分を補う。
このほか新規事業では、①両ダムの改修②用水路の改修③小水力発電施設の整備などを行う計画だ。完成により、水田640ヘクタール、畑596ヘクタールの計1236ヘクタールの用水不足に対応する。
北斗市では、22年4月に上磯土地改良区、JA新はこだてと共同で「国営北斗用水地区土地改良事業推進期成会(会長・池田達雄北斗市長)」を設立し、国営かんがい排水事業の推進を求め、今年度からの新事業が実現した。
同期成会では6月に、事業の順調な推進を求めるため、来年度の政府予算概算要求に向けた国への中央要請活動を実施する。(加納洋人)