〝地域産木材の特性を生かすものづくりで
木が持つ自然の力を未来に伝える〟
入舟町の長年眠っていた石蔵で、2019年に開業した家具製作工房「くらcra」。代表の鳥倉真史さんは、日本有数の家具産地・旭川の工房で腕を磨いた家具職人で、専門学校時代の恩師や森林資源で地域の活性化を目指す渡島総合振興局の事業「木づかいプロジェクト」に関わる人々との出会いに導かれ函館に移住。家具の製作や修繕をはじめ、道南スギを使い函館の出生祝い品の積み木や学校の下足箱の製作を幅広く請け負うなど、地域産木材の活用に力を入れる。
家具づくりには強度の高い広葉樹を使うのが主流で、柔らかく傷つきやすいスギなどの針葉樹は家具には不向きとされるが、鳥倉さんは木材の性質を生かすことを第一にデザインを考案。繊維密度が低く空気を多く含む針葉樹は、椅子にすると座面が温まりやすく、やわらかでぬくもりある感触は針葉樹にしか出せない特徴の一つという。道南スギでつくる椅子「φ40」は、角のない直径40㎜のフレームや形状の工夫で強度を保ちつつ、座るほどに背中に沿って木が削れ、体に優しくフィットする作品に仕上げた。「新しいものづくりはうまくいかなかったとしても面白い。無垢材でつくる作品は図面より必ず美しく仕上がり、見る人を感動させる。これは木の凄いところで自然の力だと思う」。工作を通して地域の課題に取り組む「函館工作座」の副会長として、市民や学生と協力し弥生町の幸坂に木製ベンチを設置するなど、さまざまな形で〝木を使ってできること〟を模索する鳥倉さん。次世代まで続く仕事を目指し、地域の人と手を携え挑戦を続けている。
(ハコラク 2025年6月号掲載)
くらcra合同会社
函館市入舟町1‐12
☎0138‐76‐3400
9:00~17:00
日曜定休
P有り