恵山岬の東約7キロの海底に沈む太平洋戦争時の米海軍潜水艦「アルバコア」の調査チームが3日、函館港に帰港した。2日に実施した調査では艦の大部分が網など漁具に覆われ、艦尾付近の一部は堆積した砂に埋まっていることを確認。空気抜きの穴や手すりなど潜水艦の特徴を示す構造物も捉えた。
自立型海中ロボット研究の第一人者で一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会(長崎県五島市)の浦環代表理事(74)=東京大学名誉教授=によるプロジェクト。5月下旬の1次調査で同艦の位置の特定や海底での撮影に成功していた。
2次調査では海上で同じ位置にとどまることができる海洋エンジニアリング(東京)の調査船「第八開洋丸」と中型の遠隔操縦式潜水機(ROV)を活用した。2日早朝に開始し、マルチビームソナーで沈没位置を確認。ROV投入前には同艦の乗組員85人に対し、黙とうをささげた。
水深約240メートルの海底にある同艦はほぼ北を進行方向にして沈んでいる。右舷側は漁具に覆われて近づくことが難しく、予定した艦の3次元モデルを構成するだけの情報は得られなかったが、左舷側からは潜水艦の特徴的な構造物を撮影することができた。
艦の前部は右舷側に20~30度傾いて、艦尾側はほぼ水平の状態を保ち、艦尾のスクリュー付近は砂に埋まっていた。浦代表理事は機雷に接触した艦首付近が20メートル程度失われ、耐圧殻の破損によって艦が〝ねじれた〟可能性があるとみている。
今後、撮影した映像を解析して調査報告をまとめ、米側とも情報を共有する。浦代表理事は「(ネット中継で)海外の方も見てくれた。アメリカの人たちも日本の軍艦を見つけてくれているので、民間の私たちが米艦の調査ができてうれしい。アルバコアでやれることは終えた」と話す。
アルバコアは1944(昭和19)年6月のマリアナ沖海戦などで大きな戦果を上げた潜水艦。同10月下旬に日本近海に向かう哨戒任務を最後に消息を絶った。同11月7日に恵山岬沖で触雷によって潜水艦を沈めた記録が旧日本海軍に残っている。
調査の様子はインターネット動画のニコニコ生放送で視聴可能。学術系クラウドファンディングのアカデミストで調査資金を募っている。(今井正一)