函館市高齢者大学青柳校の講義として、函館の縄文遺跡をテーマとした講演がこのほど、市公民館で開かれた。市立函館博物館の佐藤智雄学芸員が、函館の発掘成果に津軽海峡を挟んだ「北海道・北東北の縄文遺跡群」の特徴を交え紹介した。
市内ではこれまで326カ所の遺跡を確認し、旧市内が145カ所、縄文遺跡群の構成資産で史跡の大船、垣ノ島両遺跡がある南茅部地区が96カ所など。旧市内では現在より海面が高かった縄文時代には函館山が島で、西桔梗には定住の拠点集落だったサイベ沢遺跡が広がるなど、当時の海岸線に遺跡が点在し、佐藤さんは函館の遺跡の特徴を海との関わりが深いことを指摘。さらに「採れるものを採り、なるべく保存し、(交易で)必要なものを手に入れ、楽しく生活していたのだろう。かなり楽しかったことが1万年以上続いたこつだと思う」とした。
世界文化遺産登録が目前となった縄文遺跡群の構成資産の一つで、青森県外ケ浜町の大平山元遺跡では、国内最古の1万6500年前の土器が出土。津軽海峡の両岸地域では、ドングリなど木の実の貯蔵用として平底で高さのある円筒土器の使用が広まり、文化圏を形成。本州で弥生時代に入った後も、道内では続縄文時代が続いたことにも触れ、佐藤さんは「縄文の始まりも、縄文を最後までやっていたのも津軽海峡エリアの人たち」と話した。
このほか、函館新道沿いの石川3遺跡など、近年の市内の発掘成果やさまざまな土偶、足形付き土版やストーンサークル縄文人の精神性を伝える遺跡、遺物を紹介。博物館で開催中の企画展「大船・垣ノ島遺跡と世界遺産」もPRした。(今井正一)