多種多彩な植物が自生する函館山で、5月ごろから草花の盗掘や切り取りが相次いでいる。特に花茎の切り取りは深刻で、2つの被害を合わせて例年の3倍ほどの件数になっているという。関係者はさらなる見回り強化や登山者らへの注意喚起のほか、聞き取り調査などを行う撲滅キャンペーンを展開し、自然環境の保全・回復に努めている。
函館山にはランやユリの仲間など貴重な植物が多数存在し、車道も含めて10を超える登山コースがあるため、例年多くの登山客が詰めかける。特に今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響からか「3密」を避けられると登山が人気で、市住宅都市施設公社公園管理部西部公園事務所によると、客の登山記録は取っていないが早い時間から駐車場が満車になったり、他県ナンバーも少なくなく、目視でも客が増えている印象という。
登山客増加との因果関係は不明だが、草花の根から掘り起こす「盗掘」、また茎を引きちぎったり鋭利なもので切り落とす「切り取り」が急増しているという。持ち帰られることもあるが、周辺に捨てられているケースも多い。特に5~7月は登山客から同事務所に「前にあった草花がなくなっている」「怪しい人を見た」などの情報が多数寄せられている。
同事務所職員や函館山自然観察ボランティアが適宜、巡回を行っているというが、函館山は周囲9キロ、高さ334メートルあり、毎日すべてを見回るのは困難だ。そのため、毎日登っている人も多いことから聞き込みなどを通じたキャンペーンを8月15日まで展開し、今後の対策に生かす考え。啓発チラシの配布やのぼりも立てている。
同事務所の阪口等所長は「盗掘や切り取りは許されない行為。環境を守るためにも勝手な行動はやめてほしい」と憤る。また、コースの外れたところにある草花に触れたり写真を撮る際にほかの植物を踏む危険性も高いことから「コース内で散策を楽しんで欲しい」と話している。
被害を確認した場合は同事務所(0138・22・6789)への連絡を呼び掛けている。(小杉貴洋)