1月に急性心不全のため80歳で死去した市内小児科医で、道南市民オンブズマンの代表を務めた大河内憲司さんの妻・綾子さん(78)がこのほど、大河内さんに寄せられた香典140万円を市内幼稚園や社会福祉法人などへ全額寄付した。生前から「よりよい社会のために」と市民運動などを行ってきた大河内さんの意志を尊重し、お世話になった地域への恩返しを決めた。
大河内小児科医院(日吉町3)で、40年以上にわたり地域の子どもたちの健康を守ってきた。小児科医以外にも、1995年に市交通局の官官接待疑惑が浮上した際に道南市民オンブズマンを結成。先駆的に市民運動を実践し、その後も市議会の政務調査費(現政務活動費)の使途を問うなど、数々の業績を残した。
寄付の宛て先は、大河内さんが長年園医を務めた函館あおい幼稚園、白百合幼稚園、福ちゃん保育園と同院に近い日吉が丘児童館で、図書カード5万円分や同院の待合室に並べていた絵本などを寄贈。このほか社会福祉法人の函館一条と道南福祉ねっとにそれぞれ50万円、全国市民オンブズマン連絡会議(本部・名古屋市)に20万円の、総額140万円相当を送った。
綾子さんは大河内さんの人柄を振り返りながら「社会への恩返しとして、このように香典を使ってほしかったと思う。先生(=大河内さん)の心が伝わってくれれば」と語る。
このほど、あおい幼稚園で行われた寄贈式では、大河内さんの遺影を見せると、園児たちは「お腹をみてもらった」などと思い出した様子だったという。和泉陽子園長は「綾子さんと一緒に幼稚園のことをとても気にかけてくれいていた。寂しさもあるが大切に使わせてもらいます」と感謝を述べた。(蝦名達也)