北大大学院水産科学研究院の桜井泰憲名誉教授(67)が、本年度の道科学技術賞を受賞した。また、道総研道南農試の三澤知央研究主任(44)が、本年度の道科学技術奨励賞に輝いた。道南からは2人のみで、地域貢献に向け研究意欲をさらに高めている。
道科学技術賞は、科学技術研究を通じ道内の産業振興に貢献した個人・団体に贈られるもので、本年度は桜井さんら3人が選ばれた。北大水産学部から受賞したのは桜井さんを含めて3人目。
桜井さんはスルメイカ研究の第一人者として知られ、現在は函館国際水産・海洋都市推進機構の函館頭足類科学研究所長を務めている。スルメイカの資源変動を産卵場の海水温から予測する手法を開発するとともに、イカ類の高鮮度化流通システムを確立。また、函館イカマイスター認定制度の養成講習会には、設立当初からテキスト作成や講師として携わっており、既に約700人のイカマイスター(大日本水産会認定)を輩出している。
桜井さんは「道の水産業に関する研究が評価されてうれしい」と顔をほころばせる一方、「スルメイカの漁獲量が減り、海水が寒冷な時期になっていると思われる。これがいつまで続くのか注視したい」と話す。「これまでの知識と経験を生かし、イカだけでなく、イワシ、ブリ、サケ・マスなど水産生物の資源動向の将来予測を、漁業者や加工・流通業者に伝えたい」と意欲を見せる。
一方、三澤さんが受賞した道科学技術奨励賞(5人)は45歳未満の若手研究者が対象で、農業試験場で働く研究者は初めて。他の4人は大学教員が選ばれており、三澤さんは「道総研の研究のレベルの高さを示せた」と胸を張る。
三澤さんは、世界で初めて発見した21病害、国内初発見の16病害を含め、道内で未発生だった野菜の新病害88病害の原因を解明。8病害の病原性検定手法を確立し、その一つとしてイチゴ疫病の品種抵抗性判定法も開発し、新品種「ゆきララ」の誕生に貢献した。また、7病害の防除対策、4病害の減農薬防除法を開発し、これらの成果を76報(国際誌13報)の論文として発表した。
三澤さんは「研究は専門性と継続性が大事」と強調、「国際誌を狙っている研究テーマは、得意なリゾクトニア菌とステンフィリウム菌を含め11報あり、専門分野をより深めたい」と話している。
贈呈式は2月20日に札幌市であり、辻泰弘副知事から賞状を受け取った。(山崎大和)