北朝鮮が日本側に向けて弾道ミサイルの発射を繰り返している事態を受けて、防衛省は19日、陸上自衛隊函館駐屯地(広野町6)敷地内に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)部隊を配備した。PAC3の弾頭は、北朝鮮方向の函館山側に向けられた。防衛省は、配備の期間や規模などについて防衛上の問題を理由に明らかにしていないが、駐屯地内では隊員が慌ただしく準備に追われた。
PAC3は、ミサイルそのものを迎撃するほか、飛散したミサイルの部品なども狙うことができ、被害防止や被害拡大を防ぐとされる。防衛省は同日、函館市に警戒監視などについて「万全の体制を取る必要があるため当面の間、市内の自衛隊施設内にPAC3部隊を展開したい」と説明。市が了承したことで配備された。
道内では、航空自衛隊千歳基地(千歳市)に、青森県津軽半島の航空自衛隊車力(しゃりき)分屯基地(つがる市)に配備されていたが、一般的に迎撃範囲が半径約20キロのため、相次いだ北朝鮮のミサイル通過コースに照準を合わせるため、緊急的に函館に配備したとみられる。
関係者によると、PAC3部隊は19日午前10時すぎに空自八雲分屯基地(八雲町)を出発、一般道を使って午後0時20分ごろに車両9台が函館駐屯地に到着した。部隊は、市営競輪場と函館少年刑務所沿いの通りから駐屯地正面口に右折して入り、正門前で隊員が交通整理などをして対応し、混乱はなかった。
函館市深堀町の無職、久保弘さん(75)は「PAC3が函館に配備されることで北朝鮮からの攻撃対象になるかもしれないので心配だ」とする一方、「北朝鮮が何を考えているのか分からないので物騒になったが、この配備は仕方ない」。同市上湯川町のアルバイト、黒沢千香子さん(63)は「今日来るとは思わなかったが、(PAC3配備で)安心感はある。ただ、ミサイルでミサイルを打ち落とすことが出来るのか、またそれをやったら戦争になるのではないかと不安。考え方の違う国とどのように付き合うのかを考えた場合、日本政府は大変だと思う」と話した。(田中陽介、半澤孝平)