特定建設業の森川組(函館市海岸町、森川基嗣社長)は24日、市町会連合会の第4方面(6町会、田中修司上新川町会長)と第9方面(13町会、武下秀雄高丘町会長)と災害時における物資供給などに関する協定を締結した。本社や主な工事現場に備蓄している食料品、飲料水など非常用物資を、災害時に各町会と連携して住民に提供する。森川組、町連側ともに民間同士による同様の協定は初めてで、地域の企業と住民団体の新たな連携の好事例となりそうだ。
同社は2015年から独自の取り組みとして、土木工事などを行う現場事務所を災害支援基地(DRB=ディザスター・リリーフ・ベース)として選定。水やパンの缶詰といった非常食をはじめ、マスク、包帯などの救急用品、ブルーシート、土のう、ロープなどの資材備蓄に着手。災害で現場周辺地域の孤立などを想定し、行政などによる公的支援が開始されるまでの応急的な位置付けだが、1カ所当たり約300人分の支援を想定した規模という。
協定は、全23方面に分かれる町連のうち、本社の海岸町が含まれる第4方面、函館新外環状道路の現場事務所所在地の滝沢町が含まれる第9方面と締結。関係者約30人が見守る中で、森川社長と田中、武下両会長が調印書を交わした。これまでも現場に「地域災害支援拠点事業所」などの看板を掲げ、地域に周知をしてきたが、協定の締結で、提供方法が明確になったほか、必要に応じて、物資の搬送など人的支援も担うことなどを確認した。
武下会長は「町会の自主防災組織だけでは、必要な備蓄品をそろえきれないので非常に助かる」と話す。また、町連の深瀬晃一副会長は「協定締結は町会にとって大変意義深い。地域の企業が地域の人たちに力を貸してくれるという新しい動きに先鞭(せんべん)を付けてくれた」と感謝した。
森川社長は工期終了に伴って現場事務所が閉鎖した後も第9方面との協力関係を継続すると約束。「1社だけでは全市はカバーできない。みんなで力を合わせていかなくては」とし、取り組みの波及を期待した。(今井正一)