【江差】今夏も杉野悦男さん(93)=姥神町=が、自転車の荷台にスルメイカを載せて早朝の行商に汗を流している。「イガー、イガ、イガ」と威勢の良い声を響かせて、常連客らに鮮度抜群の朝イカを届けている。
杉野さんは江差生まれで、20代後半に両親が営む水産加工業に役立てばと行商を始めた。結婚後3人の息子に恵まれ、15年前に73歳で他界した妻のサダさんとともに朝のイカ売りのほか、ホッケのすり身づくりなどで生計を立ててきた。
イカは自宅前の漁港で仕入れる。今季は7月20日からだったが不漁で「高い値段になってしまうのが申し訳なくて」と杉野さん。8月11日から前浜の漁が上向き、16日は午前3時半に起きて準備し「大きさ、鮮度ともに今年一番だ」と常連に売り込んだ。
お得意さまという主婦は「杉野さんのイカはいつも新鮮で刺し身に最高」と笑う。杉野さんも「歩くと左ひざが痛くて仕方ないが、お盆で江差に戻って朝イカを待っている人もいるから、こえくても(疲れても)頑張る」と力を込める。杉野さんの行商は11月まで続く。(田中陽介)