函館市山の手3の住宅の庭で、リュウゼツランの一種が17年ぶりに花をつけた。長年、丹念に庭の手入れをしていた高橋鉄雄さんは6月に94歳で亡くなったばかり。家族は「もう少し長生きしてくれたら一緒に見ることができたのに」と、亡き鉄雄さんをしのんでいる。
咲き始めた植物は、花が好きな妻のクニさん(94)と一緒に庭木の手入れを欠かさなかった鉄雄さんが、30数年前に知人からもらい受けて植えたものだという。先端にとげがある固い葉が放射状に広がり、中央から花茎が垂直に伸びている。現在高さは1メートル70センチほどとなり、枝分かれした部分には十数個のつぼみを付け、スズランを大きくしたような白い花をたくさんつけた。
前回花が咲いたのは2000年6月で、「珍しい花が咲いた」と鉄雄さんは喜び、この時は背丈を超える2メートルほどの高さになった。リュウゼツランの仲間には、花を咲かせるまで長い期間を必要とするものがあり、家族の間で「次はいつ咲くのだろうか」と話題になることもあった。
昨年まで花を付ける兆候はなかったが、今年5月後半に娘の坂本永知子さんが「アスパラガスのような茎」が伸びていることに気がついた。入院中だった鉄雄さんは急に体調を崩し、6月10日に死去。2度目の花を見ることはかなわなかったが、同月下旬に無数の花をつけた。
坂本さんは「17年も咲かなかったのに、亡くなった月に咲くなんて不思議です。父は昨年は元気に庭に出ていたので、見せてあげたかった」と話している。(今井正一)