函館唯一の地酒「函館奉行」の原料となる酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」の田植えと豊作祈願祭が3日、函館市米原町の水田であった。5年目となる今年は昨年より3トン(玄米)多い10トンの収穫を目指す。北海道新幹線開業により土産品として720ミリリットルの売れ行きが好調なほか、市のふるさと納税返礼品にも採用されるなど、認知度が高まっている。
観光地である函館に合う地酒造りを目指し、北海道食品開発流通地興(谷澤廣代表理事)が企画、取り組んでいる。
昨年は1万6500平方メートルの水田で生産した吟風7トンを使い、小西酒造(兵庫県伊丹市)が醸造。1・8リットル(一升瓶)で約6000本を出荷した。同社所有の酵母と、函館高専の小林淳哉教授の研究グループが開発した菜の花酵母を使い、商品は720ミリリットルと1・8リットルの2種類がある。
今年も醸造元や酵母は変わらず、2万1000平方メートルに作付け、10月初旬に収穫を見込んでいる。新酒が出来上がるのは来年2~3月で、1・8リットルで8000本の出荷を見込む。
祈願祭には生産者の橋田孝一さん(69)と寺本功さん(72)、同社の庄司明生営業本部長、市の川村真一農林水産部長ら約15人が出席。玉ぐしをささげ、今年の豊作を祈った。神事に続き、出席者が田に入り吟風の苗を丁寧に移植した。
函館奉行はおととし、ワイングラスでおいしく飲める日本酒の品評会で金賞を射止め、香り豊かで女性でも飲みやすいまろやかな口当たりが好評を得ている。
谷澤代表理事は「市民に潤沢に行き渡った折には、引き合いが来ている香港や上海への輸出も試みたい。無事に稲刈りを迎えたい」と話していた。(山崎大和)