文化庁は28日、物語性のある地方の文化や伝統を認定する「日本遺産」に、函館市、松前町を含む11市町の「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落」と、江差町の「江差の五月は江戸にもない~ニシン繁栄が息づく町」など17件を選んだと発表した。この認定は道内で初めて。
北海道から福井県までの7道県11市町が申請した北前船のストーリーは、日本海の怒涛を乗り越え、「動く総合商社」として寄港地に繁栄をもたらした船やその船主の功績を紹介。加賀橋立の北前船主が寄進した鳥居がある厳島神社(函館)や廻船問屋や船主が集住した福山城下町遺跡(松前)など88件を構成文化財とした。
工藤寿樹函館市長は「北前船がもたらした広域の文化や歴史などを一体的に情報発信して地域の魅力向上につなげ、交流人口の拡大に取り組んでいきたい」、石山英雄松前町長は「町、北海道にとって大きな財産になるもので大変うれしい。北前船の歴史を改めて町民に認識してもらい、11自治体の連携を密にして北前船を全国に発信していきたい」とコメントした。
一方、江差は、町教委が主体となって2年前から町民らの声を参考に申請を準備。江戸時代から明治にかけて日本海ニシン漁とその加工品の交易で形成された街並みや食文化、民謡、祭礼などを厳選して盛り込んだ。
江差町の照井誉之介町長は「認定を契機にさらなる地域活性化に力を入れる。特に今年は前浜で104年ぶりにニシンの「群来」(くき)が確認されたところでもあり、これらを追い風に『日本遺産』で掲げた江差の魅力を活用し、歴史や文化を生かしたまちづくりに取り組んでいきたい」としている。(田中陽介、金子真人、神部造)
<日本遺産> 日本遺産制度は2015年度に創設。1つのテーマをもとに、地域に点在する有形・無形の文化財に物語性を持たせてPRし、観光振興や文化継承を狙う。認定には価値や意義を分かりやすく説明できる物語が重要視され、本年度は申請79件のうち17件が認定され、計54件となった。