函館市安浦町の安浦漁港東側の海岸に14日、体長4メートル36センチ、重さ約1トンのオウギハクジラが打ち上げられているのを地元の漁業者が発見した。クジラは15日に函館市国際水産・海洋総合研究センター(弁天町20)に運ばれ、国立科学博物館(東京)の研究者らによる解剖が行われた。同館の田島木綿子博士は「オウギハクジラが北海道の太平洋側で確認されるのは極めて珍しい。貴重な検体なので各研究機関と連携して調査を進めていきたい」と話している。
オウギハクジラはオウギハクジラ属に属する小型のクジラで、世界的にも確認例が少なく、生態が不明な部分が多い。北海道では日本海側で漂着の報告があるが、「太平洋側に打ち上げられたのは聞いたことがない」と田島さん。「何らかの理由で津軽海峡を渡ってたどり着いたのでは」と推測する。
この日の解剖には田島さんを中心に、北大や同大大学院でクジラを研究する学生ら約10人が参加。肉片と骨を切り離したり、内臓を分離して長さや重さを測るなど手早く作業を進めていった。
田島さんは「クジラは雄で生殖能力はあるが、かなり若いと推測される。内臓に病気の兆候は見られず、致命傷となるような外傷もないので、現時点では死因は特定できない」としながら「かなりやせた状態なので、衰弱死した可能性も考えられる」とする。
解剖された検体は愛媛大学など国内各地のクジラ類研究機関に送られ、DNA分析や有害物質の汚染状況などについて詳しく調査が行われる。(小川俊之)