北斗市のタクシー会社「しんわ交通」の八木橋朋弘さん(当時42)が殺害された「タクシー運転手被害強盗殺人事件」は、21日で発生から10年を迎えた。函館西、中央署などは同日、函館西署函館駅前交番付近と函館昭和タウンプラザ内で街頭啓発を行い、改めて情報提供を呼び掛けた。
事件は2006年12月21日早朝、函館市港町3の函館港でタクシーのトランクから、刃物で刺されて死亡した八木橋さんを同僚が見つけて発覚。売上金約2万円も奪われていた。
捜査では、八木橋さんは同日午前3時50分ごろ、北斗市七重浜1付近で前日の勤務から16番目の客を乗せて、国道227号を七飯町方面へ走行。同4時20分ごろ、同町峠下周辺で停車していたことがGPS(衛星利用測位システム)で分かっている。
さらに、峠下では八木橋さんの血痕や携帯電話が見つかっていることから、殺害現場の可能性が高い。犯人は犯行後、タクシーのトランクに遺体を運び、自ら運転して函館港に向かい、到着後に逃走したとみられる。
この事件では10年間で捜査員延べ10万7000人を投入するも、有力な情報がなく捜査は難航。これまでの情報提供件数は170件で、14年9件、昨年10件、今年2件と減少し、捜査関係者は「事件を風化させずに捜査を進める」とする。
交番前での街頭啓発には署員のほか、函館地区ハイヤー協会の横田有一会長ら計30人が参加、通行人に捜査本部の電話番号などを記したポケットティッシュを配って協力を求めた。同協会の100台の防犯板には名刺サイズの啓発物も貼っている。
横田会長は「犯人が捕まらなければ遺族の無念を晴らせない。働く側の安全とともにお客さまにも安心して利用してもらえるようにしたい」。同署の官能範博刑事・生活安全官は「ささいな情報でもいいので協力を」としている。合同捜査本部のフリーダイヤルは0120・004・179。(田中陽介)