函館の歴史的街並みについて考える「景観フォーラム」が29日、末広町の金森ホールで開かれた。歴史的資源の活用やまちづくりをテーマとした講演、パネルディスカッションのほか、会場周辺の伝統的建造物などを巡る街歩きを実施。開港都市ならではの街並みの良さを発信し、次世代への継承と市民の意識醸成につなげた。
市と、景観保全やまちづくりに取り組む市民団体で組織する「函館景観まちづくり協議会」(岡田暁会長)の共催で初開催。今月4日の「都市景観の日」を前に開き、市民約100人が参加した。
ベイエリアのレンガ倉庫をリノベーションし、2021年に開業した「NIPPONIA HOTEL(ニッポニアホテル)函館港町」を運営するバリューマネジメント(大阪)社長の他力野淳氏が基調講演。各地で歴史的資源を活用した宿泊施設などを展開する事業に触れ「全国的な人口減でまちの形を残せるか岐路に立っている。守るものが増えていく中、文化を維持するには税による保全は難しい。地域資源を官と民が一緒になって守っていく時代に来ている」と強調。同社で手掛けたニッポニアホテルの客室は北欧を意識したシンプルなデザインながら、レンガ倉庫の梁を活用した造りとしており「(文化財を)守りながら生かしていくことが重要」と力を込めた。
パネルディスカッションには、箱バル不動産代表の蒲生寛之氏、はこだて西部まちづくRe―Design代表の北山拓氏も加わり、同協議会の仙石智義事務局長がコーディネーターを務めた。観光客が多く訪れる西部地区の景観保全に関し、他力野氏は「世界的に街の風土や暮らしを体感する観光が推進されている。観光産業の中で景観が守られることで愛着につながり、人々が住み続け、街として残っていくのでは」と提言。
蒲生氏は「コロナ禍が明けてインバウンドが回復し、不動産の動きが活発化することで、暮らしを楽しむ観光のニーズとのバランスが保たれるか懸念している。難しさはあるが、しっかり向き合っていきたい」と意気込みを見せた。北山氏は「地域をどう活用したいのか、ステークホルダー(利害関係者)が合意形成の上、イメージを共有する戦略デザインが必要」とした。
歴史的建造物巡りではニッポニアホテルのほか、1909(明治42)年に海産商の建物として作られた古稀庵(末広町)や、20(大正9)年築の函館海産商同業協同組合事務所(同町)の外観や内部を見学し、市民が古建築や街並みの魅力を再認識した。(飯尾遼太)